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01914評論・エッセイ・随筆 アーカイブ

2011年5月 8日

のはなしさん / 伊集院光

★★★★★
事実は小説よりも若干奇なり

前作「のはなしに」から1年、配信媒体だったツーカーセルラー東京がKDDIに吸収され、電波が停波してから2年半。 総じて、大きく背伸びをする訳でもなく、「俺芸能人だぜ」みたいなトーンを出すわけでもなく、筆者が五感で感じた事をそのまま文章という一次元のものに変換しただけなのだが、実は変に話を盛ったり作ったりするよりもかなり難しかったりするし、それをさらっとやってしまうのは相変わらず凄いところ。

『こいつ、一番最初の話だけ読んでレビューを書きやがったな。』という邪推をされることを覚悟の上で触れるが、一番良い話だなと思ったのは、『「愛だの恋だの」の話』。TVのトーク番組やバラエティ番組で、『男は誰しも浮気をする生き物』みたいなトーンで話が展開するたびに、「あまりおねえさんを選り好みするような立場ではない」小生としては、著者と同様、リアリティを感じないどころかちょっとしたフニオチ感を覚えていたのだが、著者や、著者の取り巻きの反応、著者が出演する番組を観た視聴者からの手紙のくだりで、自分の感覚が決しておかしいものではないことに少し安心。

『「新幹線」の話』に関しては、昔自分も同じようなことを飛行機に乗っている時で考えていました。飛行機が透明だと仮定し、時速900km/hで移動しながら上空10000フィートの上で眠りこけたり「タダだから」という理由で何杯もジントニックを飲んでほろ酔い状態になったり、Beef or Chicken?の問いにドキマギしている状態で空を飛び続けている画。そしてふと右上を見ると、同じような光景が違う高度で繰り広げられていたりするのを想像すると案外面白い。

『「タン塩」の話』も、焼肉屋に行くたびに、タン塩に載っていたネギが重力に負けて網目をすり抜けてしまい、筆者同様、毎回しょんぼりしていたのだが、「この手があったか!!」と思わず感心。早いところ、たまに行く焼肉屋でも導入して欲しいものだ。

2010年5月 5日

アロハ魂 / 小林聡美

★★★★☆
Hawaii is not only Honoluluってことは分かった

小林聡美が仲間たちとハワイ島のヒロやコナで過ごした数日間を描いた旅行エッセイ。
「多くの日本人がハワイイコールオアフ島そしてホノルルを連想する中、ハワイ島に注目したのは良い着眼点でしょ♪」と言わんばかりのトーンはともかく、内容としては、日曜日の午後によく放送されている、そこそこのアベレージヒッターなタレントが出演する地方局制作の旅番組(個人的なイメージで言うなら、中京テレビかCBC制作。出演者のイメージは敢えて控えさせていただく)を観ているような感覚に近い。

ホノルル以外のハワイに興味があるなら。

2009年10月14日

のはなしに / 伊集院光

★★★★★
不器用さをロジカルに表現できる稀有な存在

前作から2年、配信媒体だったツーカーセルラー東京が消えてなくなってから1年半。続編を望む声に押しつぶされそうになったり、ようやくやる気になって、違った環境に身を置いて作業を進めるべく、『サンライズ出雲』にPCを持ち込んで作業をしようとするも、うとうとしてしまい、気が付きゃ宍道駅付近だった (ラジオ「深夜の馬鹿力」より抜粋)などといった紆余曲折を経て満を持して、満を持し過ぎた故に危うく弓が切れそうで切れずにようやく発売された本書。
当然ラジオのオープニングトーク(とはいっても、2時間番組のうち1/3程度が費やされるほど長い)の内容と被る部分は出てくるのだが、ラジオと異なり、話の途中で右の乳首から変な液体がビュービュー出たり、アピヨン星人が出て来たりするくだりがない分だけ、うまくまとめられているのは前作同様である。 リスナーでなくても、『アメトーーク』の「中学の時イケてないグループに属していた芸人」や、さくらももこ著『永沢君』が好きなら、本書もスッと読める筈。

読後の感想としては、あくまで勝手な解釈ではあるが、文章全体から、本当はみんな大なり小なり「ダメな部分」があるくせに、なにしゃらくさい事しているんだ?多少ダメでも、自分に正直な方が楽じゃないのか?というトーンが隠れているような気がするのは自分だけだろうか。

2009年4月10日

つるっつるの脳みそ 幸福な遺伝子 / つるの剛士

★★★★★
クイズが出来ない≠頭が悪い、そして、おバカ≠バカ

TVやスポーツ紙等で、彼を含む『羞恥心』や『Pabo』は所謂『おバカタレント』扱いされてはいるが、彼等は決して『おバカ』なのではなく、たまたま過去において、世間の多くの人たちが知っているであろう知識を得る機会が無かっただけのだろう。
それを証拠に、『ヘキサゴンII』において当初は珍回答が多かった彼等も、成績ではトップにはならないにせよ、今となってはある程度正解できるようになっているし、本書で触れられている、つるの剛士自身が高校受験を前にして、偏差値36であるというところまで追い詰められ、本気で勉強に取り組むようになったら、瞬く間に偏差値63になったというエピソードにも合点がいく。
(同様に同番組で珍回答を連発していた元巨人の元木大介や、千葉ロッテの西岡剛もおそらく野球一筋で、他の勉強をする機会が無かったと思われる)

また、つるの剛士本人がそれを意識しているかどうかは知らないが、本書の中でたびたび触れられている、自分がやりたいことにポジティブな気持ちを持って前向きに取り組んでいるというマインドを持ち続けていたという姿勢やエピソードは、自己啓発本ではよくあるくだりではあるが、もし彼が自己啓発本の類に目を通すことなく、本書の内容どおりに生まれながらにしてそのマインドを持っていたのだとしたら、それは物凄い才能なのだ。多くの人は、ちょっとしたことでモチベーションが下がったり、自分自身に限界を作ったり、ダメな奴と思うことによって、無意識に自分自身にリミッターをかけてしまうからだ。もしかしたら、下手な自己啓発本よりもむしろ本書を読むことにより、自分自身にかかったリミッターを外すヒントにはなるのかも知れない。

あと、読みやすいです。行きと帰りの電車の中、合計約2時間弱で読み切れましたし。

2009年1月13日

脳を活かす仕事術 「わかる」を「できる」に変える / 茂木健一郎

★★★★☆
自分自身を確認するために…

目標を立てたり、願望を抱いたり、思っているだけで、実際に行動に移すことが出来ない人のメカニズムを、一般人にも分かりやすいように説明しつつ、どうすれば行動を移すことが出来るかどうかを説いているのが本書の大筋。
確かに、やる前は大変そうなことに見えても、一回やってしまえば、あとは案外楽に物事を進めることができるものだし、実際に行動する時は、締め切りを直近の時間に、目標をちょっと無理目に設定し、それを速攻で実行するという作業を繰り返すことによって、行動を習慣にすることが出来る。
また、なりたい自分になるには、見聞きするだけではなく、実際に行動すると良いといったことなど、言っている事は、自身の経験上間違いではない。
しかし、目新しいことが書いてある訳ではなく、自己啓発系の本をある程度読んだ人であれば、物足りなさを感じるかもしれない。
『自分がやっている事は間違いではない』という確認がしたい人と、著者のファンなら。

2008年6月17日

米朝よもやま噺 / 桂米朝 (三代目)

★★★★☆
20世紀上方落語の歴史入門

上方落語の重鎮であり、戦後壊滅しかけたそれの復活に力を注いだ三代目桂米朝のエッセイ集。 実際はABC(朝日放送)・ニッポン放送で放送されている自身のラジオ番組『米朝よもやま噺』を朝日新聞社が文章に起こし、アシスタントの部分を抜くなどしてエッセイ調に焼き直して大阪本社夕刊に連載している『米朝口まかせ』として連載されていたものを単行本にしたものある。
正直言って戦前戦中戦後にかける上方の落語家や芸人のことは全くわからず、辛うじて米朝をはじめ、笑福亭松之助や桂ざこばなどの顔と名前が一致する程度ではあるが、師匠の喋りが良かったのか、それとも編集者の力量かは分からないが、結果的に『上方落語の歴史入門』のようになっており、落語初心者が手に取って読んでも大丈夫な内容になっている。また、ラジオ番組のWebに、師匠が喋った内容を文章に起こしたものがあるので、興味があるならそちらも読まれることをおすすめする。

2007年11月13日

もしもし、運命の人ですか。 / 穂村弘

★★★★★
いいひと=どうでもいいひと

学校で教わる訳でもないのに、沢山の人たちが通る恋愛と言う作業。 別に誰に教わる訳でもなく、生まれたての仔馬みたいにすぐに立ち上がることが出来る人もいれば、暗闇の地雷原を走ったり、免許も持っていないのにジェット機を操縦するかのような感覚に陥り、かすかな期待を抱いては地雷が爆発したり、ジェット機が墜落してしまうという憂き目に遭う自分みたいな人もいる。 渋谷や表参道や横浜元町あたりを歩いている数多の『つがい』達が皆、他に誰もいない場所で「好き」だの「惚れた」だの、「愛している」などと言った言葉をウィスパーしていると思うと、最早ちょっと引いてしまっている自分がいるのは、イソップ童話の『すっぱいぶどう』よろしく、手に入れたくてたまらないのに、いくら努力しても手が届かない女性やモノ、職業、地位などがある場合、それらを価値の無いもの或いは自分にふさわしくないものとみなす事で諦め、自分自身を納得させる行為なのだろうか? この本はあくまで『恋愛至上主義の敗者(?)』である筆者の現状の分析でしかなく、根本的な解決策は書かれていないが、色恋沙汰に対してもやもやを抱えている人が自分の傷を舐めるのには丁度良い。

言っておく。『いいひと』という言い方は、その相手に対し、あまり興味が無いか、いいところが見つからないから言っている当たり障りの無い言葉に過ぎない訳であって、決して褒め言葉ではないのだ。残念ながら。本を読みながら、痛いほど痛感させられましたよ。ええ。

2007年10月 1日

のはなし / 伊集院光




★★★★★
篠岡(田中)建+三遊亭楽大=伊集院光!?

ツーカーセルラー東京メールマガジン「夕刊ツーカー」で連載されていたエッセイの一部を一冊の本にまとめたもの。
元落語家らしく読者(加入者?)からテーマを募り、それを基に芋づる式(彼独特の言い回しで言うならば「ポテト・ロープ」か?)に昔の思い出やエピソード、そして自分のオピニオンといった、携帯電話の画面ではスクロールが大変な程、或る意味サービス精神に溢れた文章を綴っている。かと言って、タレントのブログ本のようにいかにも「芸能人でございます」的な文章ではなく、むしろ物書きを生業としている人の文章に近い。

内容としてはラジオで語られたものが多いのだが、ラジオで語っている時にはかなりの猛毒が混ざっていたエピソードの数々が、面白さはそのままに放送時比で9割の毒が抜けているのは巧いところ。
特に、彼の10代の頃のエピソードに共感を覚えるのは、自分自身が似たような経験をし、様々な感情を抱いても、感覚的には理解しているのに係わらず、「コミュニケーション能力」とは相反する位置にいるが故に、周囲に小さな誤解が積み重なっていく様子が、おバカなくせに悶々として日々を生きていた小学校~中学校の頃を思い出すからなのかも知れない。

2007年8月 7日

ねにもつタイプ / 岸本佐知子

★★★★★
脳内翻訳

文章を読み始めると、どこからが本当で、どこまでがフィクション或いはナチュラル・ハイな状態で何かが分泌された時に書かれたのかは良く分からないが、作者の言わんとしている事は分からなくはない。何故なら種類は違えど、良く似た(だけども種類は違う)シチュエーションに陥った経験が自分自身の身にも降りかかっていたことがあるからだ。

『帰りの通学路でスーパーマリオみたいにクリボーを踏むようにマンホールを踏み、ノコノコを蹴るが如く空き缶を蹴り、ジャンプして駐車禁止の標識タッチし、1UPキノコを出す』
『電車でたまたま乗り合わせた見知らぬ他人を見て、その人の人生やプロフィールを勝手に想像してみる』
『女性アーティストの作った楽曲が、自身の体験によるものなのか、想像なのかを考えてみる』
『原付で信号待ちしている時に、後ろから急いだ様子の舘ひろしが警察手帳を見せながら原付を奪い取ってきたらどうしよう…と考える』
『数ヶ月に1回の割合で、自分だけハンバーガーの割引クーポンが貰えなかったり、修学旅行のグループ分けに情けで入れてもらったと言った程度のちょっとした嫌な思い出を思い出すと両足をバタバタしてしまう。』
といったことを考えてしまう(或いは考えてしまった)人なら間違いなく買い。

しかも、自分自身ではちゃんと理解しているのだけれど、他の人に説明するのにはちょっと勇気が必要だったり、説明が難しかったりする内容を、よくこのように言葉、ひいては文章という、一次元的なものに置き換えるのが出来たものだなぁと感心することしきりであり、翻訳家である作者ならではの文章である。
決して100人中90人近くが共感するような内容ではないが、この本に関しては別に読者100人中4~5人しか共感しなくても良いのだ。世の中には色々な人がいると言う事を再認識する事が出来たのならば。むしろそんな事は別に関係無いのだと思う。

2007年3月 3日

私の手が語る 思想・技術・生き方 / 本田宗一郎

★★★★★
珠玉のエピソードの集合体

 二十年以上前に初版が出たエッセイだが、行動することの大切さ、ごまかしをしないことの重要性、様々な視点で物事を見ることを説き 、この頃から、目的意識を持たないまま教育が行われていることに対する危機感を感じているくだりがあり、今の世の中でも十分通用する 本田宗一郎氏の未来へのメッセージが盛り込まれている。また、一つ一つの章が短く、一話完結のスタイルであり、中学生にも分かる単純 明快な言葉でメッセージを伝えているので、ビジネスマンのみならず学生にも読んで貰いたい本だ。

 また、本田技研工業が発電機を作っている理由やマルク・シャガールとの邂逅のエピソード、アンチゴルフからゴルフ好きに転じた経緯に ついても触れられている。

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